学会概要
理事長ご挨拶
梅と楠。それぞれ低木と高木の代表格です。この二つの樹木を使った熟語に「梅の木学問」と「楠学問」があります。梅は育ちがよく、比較的早く成木となります。対して、楠は伸びが遅く、なかなか成木になりません。このことから、早熟するが大成しない学問のことを梅の木学問、成長は遅いが晩成する学問のことを楠学問と称するようになりました。楠にとっては実に誉な例えであり、梅にとっては不名誉ななぞらえといえましょう。
学問、研究にとっては高みこそが価値であるという考え方があります。頂点、最高峰などはこの考え方を反映した言葉です。ですが、この高みだけに価値を置く考え方は古いのではないでしょうか。山高きがゆえに貴からずではありませんが、樹木のありようを評するとすれば、それぞれの特性を見極める必要がありましょう。梅は、高さこそありませんが花と匂いというほかに代えがたい素晴らしさがあります。
国語教育学は、学問である以上、高みは大事です。しかし、それにもまして広がりも大切です。学ぼうとする人全てにその人なりの学びの現れがあり、その実態や原理を突き止めることを使命とする国語教育学ですから、さまざまに広がるありようにも大きな価値があると考えるのです。
全国大学国語教育学会においては、会員である実践研究者、理論研究者が自分のアプローチで国語教育の内実や奥行き、枠組みを明らかにしていくことをめざしています。しかし、各自が思い思いの方向を向いたままでは、互いの価値はおろか、自分の価値すら見えてきません。同志として集い、論を示しあい、時にぶつけ合うことが必要です。学会という組織に所属して、互いの学問の自由を最大限に尊重できる約束事を作り、それを守り、成果を検討し合い、認め合う意味がそこにあります。
教員養成系大学・学部の教職大学院化が進みつつあります。ややもすると、これまで維持してきた国語教育学研究の足元が危うくなることも考えられます。危機感すら感じますが、「しまったと思ったら、しめたと思え」(日本史の碩学上田正昭氏の言)のように何かの危機的な圧力を受けたならばそれを跳ね返すきっかけとしたいものです。
孤高の楠とは異なり、梅は孤独ではありません。梅園、梅林という言葉があるように仲間と集い、競って一つの価値を示します。私は、会員の皆様とともにこの全国大学国語教育学会を学問の豊かな花と匂いに満ちた学会にしていきたいと考えています。どうかよろしくお願い申し上げます。
全国大学国語教育学会理事長(2023年4月~) 植山 俊宏
学会の歴史と現在
全国大学国語教育学会は、1950(昭和25)年、大学の国語教育講座を担当する教員を中心に、国語教育研究の充実と発展を期して結成されました。以後、本学会は学会員の弛まぬ努力と地道な研鑽によって着実に成長を遂げ、現在、会員数が1100名を超える研究団体になっています。会員の層も、大学・附属学校の教員、大学院生から、小・中・高等学校等の教員へと広がっています。さらには、国語教育に関心を持つ人なら誰でも入会できる、開かれた学会になってきています。こうして全国大学国語教育学会は、文字通り、わが国を代表する国語教育学会として広く認知され、不動の地位を築いています。
学会の活動
学会の活動として、大きく次の三つがあります。
1.学会の開催
1年に2回(定例、春と秋)、学会を開催しています。学会では、自由研究発表、課題研究発表、シンポジウム、パネルディスカッション、ラウンドテーブルなどが行われます。歴史研究、授業研究、比較研究、実践研究など、さまざまな分野から最新の研究成果が発表されています。自由研究発表は、会員であればどなたでも発表することができます。
2.学会誌の刊行
1年に2回、学会誌「国語科教育」を発行しています。2014年3月現在、第75集まで刊行されています。ここには、編集委員によって厳正に審査された優れた学術論文が掲載されます。本誌に掲載された論文は、国語教育研究の論文の中でも最もステータスの高い論文として評価されています。大学等の高等教育機関への就職の際の業績としても、最重要論文として扱われています。
2011年度から「全国大学国語教育学会優秀論文賞」が設けられました。その年度の「国語科教育」に論文が掲載された人の中から受賞者が決定され、賞金5万円が贈られます。
3.研究情報の発信・交流
国語教育の理論と実践に関する基本図書の刊行、国語教育研究を啓発・リードする公開講座の開催、学会理解を広め、深めるホームページの充実など国語教育研究の情報発信の基地として広報活動にも努めています。
刊行図書としては、学会員の総力を結集して、国語教育学研究の発展に寄与する基本図書を刊行してきました。『国語教育学研究の成果と展望』(2002)、『国語科教育実践・研究必携』(2009)、『国語教育学研究の成果と展望Ⅱ』(2013)など、学会ならではの優れた研究成果を刊行してまいりました。
公開講座は、会員外にも広く開かれ、無料で参加できます。「国語科授業分析の方法」、「国語教科書研究の方法」など、魅力的な話題が取り上げられています。
学会役員表
理事長 | 植山俊宏 | ||||||||||||||||||||
常任理事 |
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幹事 | 長田友紀 勝田 光 寺田 守 |
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監査 | 石田喜美 上山伸幸 |
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理事 | 全国区選出理事 |
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地区選出理事 | 北海道地区 | 佐野比呂己 内藤一志 |
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東北地区 | 小川雅子 藤井知弘 |
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関東地区 | 奥泉 香 中村敦雄 中村和弘 |
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北陸地区 | 佐藤多佳子 渡部洋一郎 |
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東海地区 | 丹藤博文 守田庸一 |
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近畿地区 | 羽田 潤 堀江祐爾 |
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中国地区 | 田中宏幸 冨安慎吾 |
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四国地区 | 中西 淳 余郷裕次 |
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九州地区 | 上谷順三郎 河野智文 |
(令和5~7年度)
学会会則
第1条 |
本会は全国大学国語教育学会(Japanese Teaching Society of Japan)と称する。事務局については細則に定めることとする。 |
第2条 |
本会は,国語教育の科学的研究および大学の国語教育講座に関する研究をなし,あわせて会員相互の連絡をはかることを目的とする。 |
第3条 |
本会は,その目的を達成するために,次の事業を行う。 1 研究会(全国的には年2回,各地区では随時)の開催 |
第4条 |
本会の会員は,大学の国語教育講座に関係ある教員,附属学校教員,および本会の趣旨に賛成する者とする。また本会のために特に貢献した会員で本会から推薦された者を顧問または名誉会員とすることができる。 |
第5条 | ①本会の運営に当たるために,次の役員を置く。 一 理事長(会長)1名 二 常任理事 若干名 三 監査 2名程度 四 理事 全国理事 18名程度 地区理事 18名程度 ②役員の任務と選任について次のように定める。 1 理事は会員の所属する全国の会員の互選,および地区の会員の互選によって決める。理事は理事会を構成し,本会運営の責任を負う。 2 理事長は理事の互選によって定め本会を代表する。理事長事故あるときは常任理事の1名がこれを代行する。 3 常任理事は理事の互選により定める。理事長は必要と認めたとき,理事のうち若干名を指名し,理事会の承認を経て,常任理事に加えることができる。 4 常任理事会は,本会の運営について,常時執行の任にあたる。 5 監査は,理事会の議を経て,理事長が会員の中から委嘱する。監査は、本会の会計および会務執行を監査し、本会の運営方針について意見を述べることができる。監査は、必要と認めたとき、常任理事会に臨時総会を開くように勧告することができる。(平成17年10月29日修正) |
第6条 |
本会は,次の9地区をおく。 |
第7条 | 役員の任期は3か年とする。ただし再選をさまたげない。 |
第8条 | 本会に総会を置き,事業計画,会計事項,規約及び理事会が必要と認めた事項を審議する。総会は,各大会時に開催するが,必要・緊急な場合(会員の三分一以上の請求,又は常任理事会の決定による。)においては臨時総会を開催する。その議決は,出席者の過半数をもって決することとし,同数の場合は議長がこれを決する。 |
第9条 | 本会の経費は,会費・寄附金,その他の収入をもってこれにあてる。 |
第10条 | 会費については別途定める。 |
第11条 | 本会の会計年度は毎年4月1日に始まり,翌年3月31日に終わる。 |
第12条 | 会則の変更は,総会(全国研究会をもってこれに代える。)の議を経なければならない。 |
改定履歴 | 1950年9月23日議案 1953年5月29日修正 1956年9月20日修正 1957年9月20日修正 1958年7月28日修正 1962年9月20日修正 1964年9月20日修正 1966年9月28日修正 1967年9月28日修正 1969年10月29日修正 1972年8月6日修正 1975年8月6日修正 1978年10月19日修正 1979年8月16日修正 1980年8月8日修正 1985年7月29日修正 1986年8月1日修正 1990年10月12日修正 1995年8月2日修正 2000年10月14日修正 2002年10月19日修正 2005年10月19日修正 2007年5月26日修正 2009年5月30日修正 |